瑠璃の昼行灯 零 6
薄暮の中、紗雪は家路につく。華芸町の香具師たちは店仕舞いを始めていた。日が落ち、月が昇り始めるこの時間に、見世を開いても意味が無いからだ。
この時間帯に華芸町を訪れる者達は、香具師達の芸が目的ではない。華芸町を抜けた先、北乾第二区が目的だ。
北乾第二区。
通称『
そろそろ日も落ちようとしている。空の隅に僅かな茜色を残すばかりだ。華芸町と愛染街を繋ぐ橋が下ろされる時間だ。
その橋を十五橋と呼んだ。
白月が昇るころ下ろされ、こちら側と、橋の向こうのあちら側とを繋ぐ。奥から順に、一橋、二橋、三橋……、そして、十五橋。
月の満ち欠けに順じて橋は下ろされる。十五橋までいったら、今度は逆順だ。
そして朝日が昇り、空から月が姿を消す頃に、上げられる。
この橋が、愛染街と外を繋ぐ唯一の架け橋である。
橋の向こう、艶やかに着飾った少年少女がちらりと見えた。堤に植えられた柳の葉が、脂粉の香りを乗せた風にさわりと揺れる。
紗雪は未だ、愛染街に足を踏み入れた事は無い。今後も立ち寄る事は無いだろう。
艶やかに、煌びやかに飾り立てられた愛欲の街から湧き出る笛の音、三味の音、笑い声。
風に乗って運ばれてくるそれらから逃れるように、紗雪は足を速めた。
華芸町を抜け、私塾の前まで戻ってきた。
歩く速度を落とし、上がった息を整える。
通りには家路に急ぐ人が溢れている。同じ喧騒だというのに、愛染街の喧騒とはどこか種類が違う。風に運ばれてくる香りも、脂粉の匂いではく、食べ物の匂いだ。
それもそのはず、ここは悠々館の前だ。
店の前で、店主が餅を焼いている。その息子が店内で客の相手をしていた。
ふう、と紗雪は大きく息を吐き出した。
非日常から日常に戻ってきた。ここの空気はやはり落ち着く。
鞄を胸に抱えて、呼吸を落ち着ける。安心したのか、漂う香りに食欲が刺激された。腹がぐるりと鳴る。腹を押さえた。
誰も気付いてはいないし、気にかけてはいないだろうと分かりながらも、思わず周囲を窺った。皆、特に紗雪には気を留めずに歩を進めている。ほっと息を吐いて、紗雪も群衆の中を歩いた。
と、威勢の良い声が聞こえてきて、紗雪は思わず足を止めた。
「読売だよ! 読売はいかがかね!」
ある一点に人だかりができている。その中心には読売がいた。
瓦版を配りながら、節をつけて謳っている。風に舞った一枚を拾い上げ、紗雪はざっと目を通した。
そこには先日の事件の事が書かれていた。
事件の折、里炎組の交換条件に中々応じようとしない桔梗に、跡継ぎである長男が「ならばせめて、自分が父の代わりにこの身を差し出そう」と述べたという事。
その他にもつらつらと、跡継ぎ様の正義漢ぶりが述べられている。
そしてそれと同列に書かれているのは、次男の矮小ぶり。
父にいつ、兄ではなくお前が行けと言われるのか、震えるばかりであったと記載されている。
そして、十二代目桔梗やその跡継ぎの長兄と、同等の価値が自分に有ると思い込んでいる次男を、散々に酷評している。
読売に記載されている事は、どこまで本当か分からない。
何せ、瑠璃の民は如月の人間を知らないからだ。彼らの名前、歳などの詳細は分からない。何歳ならしい、こんな仕事をしているらしい、こんな生活を送っているらしい。全てが憶測だ。
彼らの名前は、『桔梗』を継いだ時に明かされる。『桔梗』を継がぬ者の名は、ずっと明かされず仕舞いだ。
ちなみに現在の瑠璃の里の長、十二代如月桔梗の名は
襲名したのは紗雪が幼い頃だ。襲名式の荘厳さは何となく記憶に有る。が、幼すぎてよく覚えていない。
里の民は如月の名前だけでなく、もちろん顔も知らない。瑠璃の史記には、『冬の湖面に写る三日月のような』と初代桔梗は描写されているものの、似絵などは残っていない。
如月の顔は、年に二度催される瑠璃の祭事での奉納舞でくらいしか目にする事は無い。その時も彼らは面をつけているし、実際には顔は見えないのだが。
それにも関わらず、毎日のように、読売には如月関連の記事が記載されている。
主な記事は、十二代目桔梗の一日の動向。
そして彼の息子達の事。
優秀な兄と、凡愚な弟。
面白可笑しく、記事は彼らの事を書き散らかしている。
(よくここまで書けたものね……)
呆れ交じりに、紗雪は大きく息を吐いた。
見ず知らずの人間だというのに、まるで、紗雪自身の知己だと錯覚させる程の詳細ぶりだ。
(しかし『昼行灯』ね……)
記事の見出しに大きく踊るその文字を、紗雪はそっと指でなぞった。
如月の次男を、民は『昼行灯』と呼ぶ。
いてもいなくても同じ、役立たず、と呼ぶ。
優秀な父、優秀な兄、そして凡愚と呼ばれるその弟。
(……私は、違うんだから)
自分にも優秀な父がいる。優秀な兄もいる。
だがけして、自分は凡愚などではない。いずれ父や兄と同じ土俵に立ってみせる。
紗雪はぐっと唇を噛みしめた。
その時だ。
知らず俯いていた紗雪の耳に、悲鳴が飛び込んできた。壱班の鳴らす高い警笛が響き渡る。
「待て!」
割れた人波の合間を、男が必死の形相で駆けてくる。
「きゃ……っ」
ちょうど男の進路にいた紗雪は、突き飛ばされて尻餅をついた。落とした鞄が開き、教本が散らばる。
その紗雪の目の前を、二人の壱班員が駆け抜けて行く。
男は取り押さえられ、何やら喚いている。人垣の向こうから、壱班の怒号と男の喚き声が聞こえてきた。どうやら男は破天の者のようだ。
ざわざわと周囲の空気が揺れる。好奇と恐れと無関心。足早に通り過ぎる者もいれば、壱班らを取り囲む人垣の向こうを見ようと、必死に爪先立ちをしている者もいる。
胸がドキドキと鳴っている。教本を拾わなければ、と思うのに、突然の事態への驚きが勝ってしまって、どうにも動けない。
と、誰かが教本に手を伸ばすのが見えた。
自分の物なのだから、自分で拾わなければ。そう思うのに、思うだけで、頭が働いていない。
その人は集めた教本の汚れを払い、鞄を拾い上げた。
同じように鞄の汚れを払い落とし、教本を中に収め、紗雪の前に立った。
「ねえ、君。大丈夫?」
座り込んだまま、ぼうっとその光景を見ていた紗雪は、呼びかけられる声にはっと気付いて、首を竦めた。
「あ、は、はい。平気……で」
す。
最後の一文字は声にならなかった。
ようやく初めて、その人の姿を知覚した。
僅かに癖の有る、少し長めの柔らかな黒髪。
大きく涼しげな目はくっきりとした二重で、瞳は灰色だ。長い睫毛が、白く滑らかな頬に影を落とす。
紗雪と同じ歳ぐらいだろうか。彼は濃紺の袷と縞の羽織を身に纏っていた。
「ええと、平気、かな……?」
柳眉を僅かに寄せて、彼は首を傾げる。黒髪がさらりと揺れて、細い首筋の上を滑っていった。
「どこか痛めたのかな? まさか怪我とか……」
立てる? と手が差し伸べられる。指は細く長くしなやかで、まるで女性のように美しい。手を差し伸べる仕草も洗練されており、優雅で繊細な動きだった。
「ぅあ、や、平気です。立てます」
砂で汚れた自分の手をその上に重ねるなんて、畏れ多くてできやしない。紗雪は先日の筋肉痛と戦いながら、ゆっくりと立ち上がった。
(やばい……。これは、やばい……)
掌と尻の砂を払い、紗雪はぐっと胸元を押さえた。
うるさい程の鼓動が布越しに伝わってくる。これは、先ほどの驚きの所為ではない。目の前の彼によってもたらされたものだ。
甘いながらも爽やかで、それでいて柔らかくも凛とした、雅やかでありながらも親しみの持てる、人懐っこい顔立ち。
彼はまさに、自分の理想を具現化した姿だ。
理想を口にしながらも、まさか本当にそんな人間がいるわけが無いと思っていたが、本当にいた。
「平気かな? どこも傷めていない?」
「あ、はい。平気、です。平気なんで」
不自然に言葉が途切れる。顔が熱い。
「そう。なら良かった」
と、彼は微笑を浮かべた。涼やかな目が三日月の形に細められ、暖かな輝きを放つ。紗雪の体温が一気に上昇した。
「はい、どうぞ」
「あ、と、ありがとう……ございます。すみません」
手渡された鞄を受け取る。
僅かに指先が触れ、鼓動が跳ねた。
顔が火照る。
思わず、抱え込んだ鞄に顔を埋めた。
「ねえ、君さ」
俯く紗雪に、柔らかな声が降ってきた。
「昨日もここにいなかった?」
「え? あ、ここ、……って……?」
ここ、と彼は悠々館を指差す。
「ぼくはね、ここの菓子が好きでよく買いに来るんだ。そうしたら昨日、何だかちょっと、……ね?」
と、彼は悪戯っぽく目を眇めた。
「み、昨日の、見てました、か」
「うん、ばっちり」
くすくすと彼は笑う。
顔から火が出そうなくらいに顔が熱い。恥ずかしさのあまり、涙が滲んだ。
慌てて彼は手を振った。
「あ、ごめんね。馬鹿にしてるわけじゃないんだよ? 君は、ああいう事が良くあるのかなって」
「え? どういう……」
「告白とかよくされたりするのかな、って。ほら、君、綺麗だから」
「ぎゃ……っ!」
「ぎゃ?」
「や、何でも、ないです」
紗雪は熱い頬を両手で押さえた。
何だ。何だ何だこの展開は。
「ねえ、ところで君さ。名前は何ていうのかな?」
「え、あ、私、ですか? え、紗雪って、言います」
「そう。ぼくは悠一って言うんだ。……紗雪ちゃん、ね。綺麗な名前だね」
「ぅあ、ありがとう、ございます。……でも、あんまし、この名前好きじゃなくて……」
「何で?」
「いや、だって、髪の色こんななのに『雪』って、何か変じゃないですか……?」
「そうかな? 君は肌が白いから良く似合っていると思うよ?」
「ぎゃ……っ!!」
「ぎゃ?」
「え、や、いや、何でも、何でもないです……」
何だ。何だ何だ何だこの展開は。
期待してしまうじゃないか。
ふいに悠一はしゃがみ込んだ。足元に落ちた読売を拾い上げる。先程突き飛ばされた折に、紗雪が落としたものだ。
悠一はそれにざっと目を通し、形の良い唇を皮肉気に歪ませた。
その表情の変化に、紗雪はぱちりと瞬いた。
「ほら、どいたどいた! 見せ物じゃないぞ!」
警笛を鳴らし、壱班が人ごみを散らしている。集まっていた野次馬が、壱班に不平を漏らしながらもその場を後にする。
割れた人垣の向こう、取り押さえられた男が見えた。男も、男を取り押さえる壱班も、警笛を咥えた壱班も、皆怪我を負っている。白茶けた地面は血で汚れていた。
「……すごいね。ぼくには、到底あんなことは出来そうにもない」
悠一はぐしゃりと読売を握りつぶした。
柔和な顔立ちに、苦々しい笑みを浮かべる。白い肌は、白いを通り越し青白くさえあった。握り締めた拳は僅かに震えていた。
彼は大きく息を吐き、笑みを浮かべてみせた。
「……どうにも、ね。血は苦手なんだ。だからぼくは、昼行灯なんて呼ばれてしまうんだね」
「え」
紗雪は驚きに目を瞠る。
「もう行くね。お話出来て楽しかったよ」
悠一はちらりと背後を見やった。紗雪は悠一の視線の先を追う。その先は瑠璃の中央、支暁殿が有る方角だ。
「また、ここに来たら君に会えるかな?」
「え、あ、は、はい。結構、しょっちゅうこの辺りにいるんで」
「そう」
にこりと悠一は笑う。紗雪の胸は高鳴る。
「それじゃあね」
人ごみの向こうへ、悠一が消えていく。
悠一の背が人ごみに隠れてしまってからも、紗雪はぼんやりと立ち尽くしていた。
周囲に満ちる喧騒が、何だか遠く聞こえた。
すると、紗雪の耳に女の悲鳴が跳び込んできた。びくりと首を竦める。
一気にざわめきが膨れ上がる。悲鳴と共に、人々は散り散りに走り出す。
「この野郎! 畜生……っ!」
「待て!」
破天の男が、壱班の手をかいくぐって走り出す。血走った目には憤怒が浮かんでいる。
男の視線に射られ、紗雪の体が強張る。
「どけ!」
ひ、と喉が鳴った。
体が動かない。
紗雪はぎゅっと目を瞑った。
が、衝撃は来ない。
そっと目を開けると、目の前に見知った背中が有った。
男はすぐ側に倒れている。げほげほと派手に咳き込みながら、男は体を丸めていた。
「あ……あんた、いたの?」
「いましたよ」
男を蹴りつけた右足をゆっくりと元に戻しながら、紫呉はしれっと答えた。
「……くそ……っ」
男は毒づいて、腹を抱えて立ち上がる。そしてそのまま、走り去っていく。
その後ろを壱班が追った。荒々しい声と足音が遠ざかっていく。
ざわめきが徐々に静まり、やがて、いつも通りの穏やかな喧騒に落ち着いた。人々は眼前の事件を口にしながら、それぞれその場を後にする。
「あ、あの……。ありがとう」
「いえ」
紫呉は、男と壱班が消えた方角をじっと見ている。
この場に居たというのに、何だか実感が無い。まるで、今あった事がもう既に過去の事のように感じる。
だが地面に残る血の後はまだ新しく、尻餅をついた時に得た痛みはまだ治まっていない。
痛みを感じた途端、急に実感が沸いてきた。
はっと気付いて、紫呉の袖を慌てて引っ張る。
「ね、ねえ。何で逃がしたの? 良かったの?」
「今の僕は、ただの一般人ですよ」
と、紫呉は両手を広げて見せた。
彼の言うとおり、今の紫呉はいつもの格好だ。黒の袷に白の袴。壱班の出で立ちではない。
「この格好での過剰な武力行使は、あまり褒められたものではありません」
「あ、うん……そっか……。そうね……」
頷いて、紗雪は膝に手をついて項垂れた。
「平気ですか?」
「うん、平気。緊張解けたら、何か一気にぐったりきたわ」
男の血走った目を思い出す。ぶるりと体が震えた。じっとりと嫌な汗が体を濡らす。
「あんたたち、すごいわね……。ああいうのといっつも戦ってるんでしょ?」
「すごくは無いですが……。まあ、そうですね」
「すごいわよ。だって、睨まれただけで私怖かったもの」
「僕だって怖いですよ」
「嘘ばっかり」
本当ですよ、と紫呉は苦笑を滲ませた。
「ていうか、あんたいつからいたのよ。いきなりだからびっくりしたわ」
「今来たところです。少し行く所が有りまして。そうしたら何やら騒がしかったもので見てみたら、見知った顔があったもので、思わず」
「そう。でも良かった。あんたが来てくれてなきゃって思うと、ぞっとするわ」
「ええ、僕も、良かったです。紗雪が怪我をしなくて」
「……うん。ありがと」
いえ、と紫呉は何かを拾い上げる。
ぐしゃぐしゃになった読売だ。悠一が落としていったものだろう。
紫呉は目を通し、くっと喉を引きつらせるようにして微笑った。
「なかなか、すごい事が書いてありますね」
気付いた読売が、こちらに近づいてくる。紫呉は懐から銅貨を一枚取り出して、読売の手に乗せた。
改めて記事に目を通す。
大きく踊る昼行灯の文字。
「……それって、本当の事なのかしら……」
だからぼくは、昼行灯なんて呼ばれてしまうんだね。
そう言った悠一の寂しげな声が耳に蘇る。
「そうなんじゃないですか? 記事になるからには、何か元が有るという事でしょう?」
「でも、すごい、誇張されてるんじゃないのかしら。だって、桔梗様も跡継ぎ様も次男様も、見た事が無いのに」
「見た事が無いから信じられるのでは?」
「見た事も無いのに、そんなの、……何か変よ。あんたは会った事有る?」
「と、言いますと、如月の方々にですか?」
「うん。だって弐班なんだし……。無いの?」
「まさか。治安維持部隊は官吏と言えど、末端ですよ。お父上に尋ねた方が良いのでは?」
「そうね……。でも、ねえ紫呉、じゃあ何であんたは治安維持部隊に入ろうと思ったの? 会った事も無い如月の為に、何でそんな危ない仕事しようと思ったの?」
「さあ……、何故でしょうね」
紫呉は読売を綺麗に伸ばしながら、首を傾げる。
「やけに肩を持ちますね」
「だって……」
彼の、切なげな表情を思い出す。
そして、あの、甘いながらも爽やかで、それでいて柔らかくも凛とした、雅やかでありながらも親しみの持てる、人懐っこい顔立ち。
ぼっと、顔が熱くなる。
鼓動が速くなる。
紗雪は胸元を押さえて俯いた。
「ねえ紫呉ー……」
「何です?」
「一目惚れってあるのねー……」
「……………………は?」
「しかも超理想的で、ほんと、もう、申し分無くて、しかも、嫌われてなさ気って感じって、あるのねー……」
「すみません話が見えません」
「夢じゃないわよねー……。だってお尻痛いし」
「尻?」
「絶対逃がさないんだから」
「はい?」
「私これから、今以上に女磨くわ。絶対捕らえる。狩る」
「狩人ですかあなたは」
「……そうね。罠とかもう、いろいろ仕掛けて、絶対手に入れるわ……」
「……左様で」
「『姫計画』大幅に躍進ね……!」
ぐっと拳を握り締める紗雪に、紫呉はふっと曖昧な笑みを浮かべた。
「……では僕は、これから行く所が有るので。失礼致します」
「あ、うん。気をつけて。さっきはありがとうね」
「いえ。紗雪こそ気をつけて。送って行って差し上げたいところですが、少しばかり急ぐので」
では、と呆れ顔で手を振る紫呉だ。手を振り返し、ふうと息を吐く。
(……よし!)
ぱん、と両手で頬を叩いて気合を入れる。
家に帰って勉強だ。
やる気が無くなったら、これからは彼の顔を思い出そう。そうしたら絶対やる気が出るはずだ。
だって、官吏になれば彼の側にいられる率は増すのだから。
心の中できゃあと叫び、紗雪は家路を急いだ。