ずる、ずる。
何かを引きずる音が部屋の外から聞こえる。
紫呉はしたためていた報告書から顔を上げた。
だんだんと音は近づいてくる。
ずるり、ずるり。
音は部屋の前で止まった。
「ねえ紫呉ちょっと良い?」
すらりと襖が開く。
本来なら顔のあるべきところに何も無い。
そして、本来なら足のあるべきところに顔がある。
知らずしていた緊張を解き、紫呉は呆れ声で廊下の顔に問う。
「……何をしているんですか」
「最近ちょっと調練不足だから」
ずる、ずる、と匍匐前進をしながら須桜はこちらにやってくる。
正直気持ち悪い。
「で、何か用ですか?」
「んー用は特に無いんだけどね。紫呉と話したかっただけ」
ずるずると匍匐前進でこちらにやってくる須桜から、思わず紫呉は逃げた。
身を引いた紫呉に須桜は気付き、にたりと悪い笑みを浮かべる。
「……何ですか」
「うふふー」
高い位置で一つに纏めている髪を梳き、須桜は顔の前にばさりと垂らした。
そしてそのまま、ずるずるとこちらにやって来る。
紫呉は立ち上がって部屋の隅に逃げた。
「……っちょ、気持ち悪いんですけど!」
「きっと来るーきっと来るー」
「歌うな! こっちに来るな!」
「えーい捕獲ー」
「放せええええ!」
うるせえよー、と部屋の向こうで影虎が呑気に言った。
助けろという紫呉の祈りは、彼には届かなかった。
何かを引きずる音が部屋の外から聞こえる。
紫呉はしたためていた報告書から顔を上げた。
だんだんと音は近づいてくる。
ずるり、ずるり。
音は部屋の前で止まった。
「ねえ紫呉ちょっと良い?」
すらりと襖が開く。
本来なら顔のあるべきところに何も無い。
そして、本来なら足のあるべきところに顔がある。
知らずしていた緊張を解き、紫呉は呆れ声で廊下の顔に問う。
「……何をしているんですか」
「最近ちょっと調練不足だから」
ずる、ずる、と匍匐前進をしながら須桜はこちらにやってくる。
正直気持ち悪い。
「で、何か用ですか?」
「んー用は特に無いんだけどね。紫呉と話したかっただけ」
ずるずると匍匐前進でこちらにやってくる須桜から、思わず紫呉は逃げた。
身を引いた紫呉に須桜は気付き、にたりと悪い笑みを浮かべる。
「……何ですか」
「うふふー」
高い位置で一つに纏めている髪を梳き、須桜は顔の前にばさりと垂らした。
そしてそのまま、ずるずるとこちらにやって来る。
紫呉は立ち上がって部屋の隅に逃げた。
「……っちょ、気持ち悪いんですけど!」
「きっと来るーきっと来るー」
「歌うな! こっちに来るな!」
「えーい捕獲ー」
「放せええええ!」
うるせえよー、と部屋の向こうで影虎が呑気に言った。
助けろという紫呉の祈りは、彼には届かなかった。